プロジェクト概要
川口ハイウェイオアシスの大ヒット商品「羽釜炊きおにぎり」の開発と販売数回復のための販促施策
期間:
2021年10月~2024年12月
メンバー:
東京ハイウエイ株式会社営業部メンバー、川口ハイウェイオアシス従業員、近隣の自家農園
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T.Y(以下Yさん)㈱東京ハイウエイ 営業部 営業課 -
H.W(以下Wさん)㈱東京ハイウエイ 営業部 営業課
プロジェクトがスタートした背景について教えてください。
【Yさん】川口ハイウェイオアシスの象徴である、鋳物の街の川口産の羽釜で炊いたごはんを使用した「羽釜炊きおにぎり」を開発しました。しかし、オープンから一年あまりで販売数が落ち込み、改善が急務となりました。

大ヒット商品となるおにぎりの開発
【Yさん】高速道路からも一般道からも利用できる形態である「ハイウェイオアシス」が2022年4月に首都高速道路で初めてオープンすることになり、弊社が運営受託しました。私は当初、店長としてオープン準備とその後の運営に携わりました。お店のコンセプトを決める際、川口を代表する産業の一つである鋳物の羽釜で炊き上げたご飯をアピールポイントとすることに決まりました。そして、レストランで提供する食事だけでなく、隣接する公園でも楽しめるおにぎりを開発し、名物として定着させることを目指しました。
その準備を進める中で、ご縁があって近隣の自家農園の方から“あるお米”を紹介いただき、試食したメンバー全員が「こんなにおいしいお米は食べたことがない」と絶賛したことでそのお米を使用することが決定しました。しかし、高価なお米だったため、如何にリーズナブルな価格で提供できるようにするか試行錯誤を重ねました。
美味しいご飯が炊けるようになるまでにどのような苦労がありましたか?
【Yさん】10~11月に入荷する新米は美味しく炊くために必要な水の量が普段と大きく変わります。時期を問わず安定して提供するための調整には苦労しました。また、羽釜は大火力のため普通に炊くとおこげが出来てしまいます。おこげも美味しいので過去に「おこげおにぎり」を販売してみましたが、視覚的に美味しそうに見えないようで販売数は伸び悩み、残念ながら思った程の成果はありませんでした。現在は、少しおこげが出来たら次は水を100cc増やす、といった具合におこげが出来ないよう日々調整しています。

羽釜はどれくらいの大きさなのでしょうか?
【Yさん】羽釜自体は大きいのですが一度に炊ける量は3kgのため、一日約50回炊くことになります。最盛期は一日中炊いては握り、炊いては握りという作業の繰り返しで、米を整え、具を入れ、のりで包むといった一連の作業が続き、まるで工場のようでした。
2022年4月、川口ハイウェイオアシスがオープンすると想定を上回る1.5~2倍のお客様が訪れました。その中でも「羽釜炊きおにぎり」は非常に人気が高く、陳列した瞬間に完売するほどで、棚に補充しようとした時にレジ待ちのお客様から「自分も買いたかったのに!」と言われることもしばしばありました。オープン初期の半月で約1万5千個の売り上げを記録しました。しかし、オープンから一年が経つと次第に売上が減少し、最盛期の半分以下の約7000個まで落ち込んでしまいました。その間、焼きおにぎりを新たに販売したり、具材を変更してバリエーションを増やしてみましたが売上はなかなか回復せず、伸び悩む結果となりました。さらに、当社が運営受託している他の売店ではおにぎりの売上が伸び続けており、ついに川口ハイウェイオアシスの売上が追い抜かれる事態になりました。社内からは「川口ハイウェイオアシスはおにぎりのお店じゃなくなったね」という声も聞こえてくるようになってしまいました。

良いものを「伝える」重要性
【Yさん】そんなタイミングでWさんが配属されました。Wさんは、もともとスバル興業のレジャー事業本部で飲食店のポップやメニュー表の制作を担当していた経験があり、「ぜひその経験を活かしてください」とお願いしました。
【Wさん】現場からはお店の入口におにぎりのラインナップが分かるような掲示物が欲しいという声が上がっており、店長と相談しながらポスター制作に取り組みました。おにぎりの有名店のメニュー看板等を参考にしながら、とにかく一目見て美味しそうと感じてもらえることを追求しました。羽釜で炊いたご飯の写真には湯気を足してほかほか感を表現し、「手作り」であることも伝わるようにしました。また、おにぎりコーナーが店の奥にあるため、売店の従業員から「お客様が入店後おにぎりを探してキョロキョロしている様子をよく見かける」「おにぎりはどこかと質問されることが多い」といった声がありました。そこで、ポスターに「おにぎりコーナーは右奥にあります」という案内パネルを添え、導線が分かりやすくしました。この変更により、おにぎりコーナーが目立ち、より多くのお客様に目に留まるようになったと感じています。

【Yさん】実際、この大きなポスターは大成功でした。自動ドアから入ってきたお客様が最初に目にする位置に設置したため、外からでもおにぎりを売っていることが一目で分かるようになったのがよかったです。ポスターを設置した結果、売上は設置前の約1.7倍に増加し、オープン当初の勢いを取り戻しました。さらに、2024年8月には過去最高の売上を記録し、現在では他の売店の売上を再逆転して突き放しています。販売数回復のためあれほどバリエーションを増やす苦労をしましたが、ポスター1枚で解決したことに驚きました。販促物の力は本当にすごいですね。頭では理解していても、形にするのは難しく、あのような迫力あるポスターを作り上げるのは想像できませんでした。私が店長の時にやっておけばよかったなと思います(笑)Wさんはこの実績が認められ、他の売店から「うちも作ってほしい」とオファーが届き、忙しい日々が続いています。

プロジェクトにおいて苦労したことは何ですか?
【Yさん】味が落ちたのか、おにぎりの種類に飽きられたのか、と悩みながら様々な種類のおにぎりを開発し販売しましたがなかなか結果には繋がりませんでした。しかし、ポスターを掲示するととたんに解決し、視覚的なアプローチの重要性を実感しました。
【Wさん】私が苦労したのは「誰がみても伝わる言い回し」を作ることです。初めて導線案内パネルを制作した際、「おにぎりコーナーはレジの右奥です」と記載しましたが、この表現ではお客様がレジで尋ねることが多くなり逆に混乱を招いてしまいました。売店の従業員からのフィードバックを受け、「おにぎりコーナーは右奥にあります」というシンプルな文言に変更したところ、迷わずおにぎりコーナーを見つけていただけるようになりました。言葉のニュアンスは人によって受け取り方が異なることを痛感しましたが、誰が見ても同じように受け取れるメッセージを作るのは難しく、また面白いと感じました。

プロジェクトの経験を通じて得たことについてお聞かせください。
【Yさん】当社が運営受託する有料道路の売店は、川口ハイウェイオアシスの他に首都高速道路に三店舗、東名高速道路に二店舗あります。川口ハイウェイオアシスでの成功を他の店にも広げていくために、新たなヒット商品を模索し続けていきたいと思います。本当に、どこにアイデアが転がっているか分からないですから。
【Wさん】ポップやポスター等の販促物には、売上を約3割向上させる力があると言われています。今回、3割以上の成果を出せたので改めて販促物や広告の力とそのやりがいを学びました。